朗読わーくしょっぷ〈言の葉を愛でる〉
「山川方夫作 品発表会」

at ナカユクイ（西荻窪）


山川方夫作『他人の夏』
朗読：前田はるみ、町田陽子

「他人の夏」は、
昭和39年1964年6月発表の
「長くて短い一年」(光風社)の
一作品として発表された。
その後、1991年発表の
「夏の葬列」(集英社)にも
収録されることとなる。
物語の舞台は、
山川作品の象徴でもある「夏」「海」。

海岸の町で生まれ育った少年、慎一の、
ひとつの夏の出来事が描かれている。
作者山川方夫の家族は、
毎年夏になると大磯を訪れていたという。
大磯は、山川家が別荘を構え、
数々の舞台となる二宮の隣駅でもあり、
海岸の町は大磯を
イメージしていたのではないだろうか。

主人公慎一は、父親を14歳で亡くし、
父の死と葛藤しながらも
懸命に生きている。
作者山川方夫もまた、
父親を14歳の時に亡くしている。
父の死は、わずか14歳にして
家長であることを告げられ、
それを機に小説家になることが
決定づけられたであろう、
山川に深いところで
確固たる影響を与えている
出来事である。

父の死を巡り、残された者が
どのように向き合い
どのように生きるのか、
作家自らと重ね合わせた
問い掛けが展開される。
この問い掛けが、
他人である女に影響を与えることとなる。
必死に生きている
他人同士が交わることにより、
生のエネルギーがスパークする。
そんな人と人との関わりの妙も
この作品は伝えている。

作品が発表された1964年は、
山川が生田みどりと結婚式を挙げ
新居を二宮に構えた年である。
その翌年、山川は交通事故で
不慮の死を遂げてしまう。
自らの死をまったく想定していない中で
この作品を書き上げた。
運命の皮肉さと、
非凡な作家のその後を
見ることの出来なかった
無念さを痛感せざるを得ない。

山川方夫作『他人の夏』

町田陽子
海岸の町、夏と言う季節感、
そこで出会う他人同士。
他人…と言う言葉の与える
冷たい印象と、都会的でオシャレ、
決して押し付けない
爽やかな表現の裏に、
山川さんの、強い思いが
隠れているように思います。
そのコントラストを表現できたら
最高です。

山川方夫作『他人の夏』

前田はるみ
慎一は、父の言葉を
いつ聞いたのだろう、
どのように受け止めたのだろう、
そして今、父のことを
どう思っているのだろう…。
言葉には表わされていない
慎一の気持ちをたどっていくうちに、
たしかに「海岸のその町」で生きる
慎一に会うことが出来ました。

山川方夫作『夏の葬列』

朗読：磯野聡、三島光恵、清野千恵子、佐藤智子、仲畑良子

本作『夏の葬列』で知る人も多い
山川方夫は、大学時代から
「三田文学」に関わり、
大学卒業後「三田文学」が
復刊した際には編集を担当。
曽根綾子、江藤淳、坂上弘、
安岡章太郎、遠藤周作、
奥野健男、谷川俊太郎、
矢代静一、川上宗薫、
佐藤愛子、村松剛、
服部達らを世に出した
敏腕編集者としても名を馳せた。

山川方夫は、
「三田文学」の編集を退いた後、
作家として作品を発表していく。
芥川賞、直木賞の候補になった他、
文学に関する座談会にも参加。
テレビドラマ、映画の仕事、
エッセイや評論活動も行っている。
また海外にも
作品が発表されている。

1962（昭和37）年
『ヒッチコック・マガジン』に
ショート・ショート
「親しい友人たち」シリーズを掲載。
その中の1編が
『夏の葬列』である。

『夏の葬列』の舞台は
山川方夫の疎開先であった二宮が
モデルと言われている。

『夏の葬列』が書かれたのは、
東京オリンピックを 2年後に控えた
高度成長期直前の時代。
作者自身、生田（当時）みどり
（後に『芸術新潮』編集長）と婚約し、
人生の転換期の時期に
書かれたと思われる。

山川方夫作『夏の葬列』

朗読：磯野聡、三島光恵、清野千恵子、佐藤智子、仲畑良子

山川方夫作『夏の葬列』

朗読：磯野聡、三島光恵、清野千恵子、佐藤智子、仲畑良子

山川方夫作『夏の葬列』

三島光恵
戦時中、子供時代の
悲惨な事件への罪に
正面から向き合う
主人公の人生の再出発。
自責の念に苦しむ彼は
誰よりも繊細で
誠実な人だと思います。
ある夏の出来事をきっかけに、
そんな彼が過去を向き合うことで、
未来にも向き合えるように
なっていく姿を、
一瞬一瞬の
彼の心境の変化の過程を
私も一緒に歩みつつ、
表現できたらと思います

山川方夫作『夏の葬列』

磯野 聡
「はだしのまま、砂利の多いこの道を
駆けて通学させられた
小学生のころの自分を、
急になまなましく
彼は思い出した」

東日本大震災のこと、
シリアにおける人質事件に
感じた思いが甦る。
この物語は
まだ終わっていない。

山川方夫作『夏の葬列』

清野千恵子
人は誰にも隠したい自分がいて、
その自分と向き合い受け入れて
初めて自由になれる事が
あると思う。
苦しいけれど価値がある。
ただその経験が
戦争によるものならば、
あまりに残酷だと思う。
戦争はいらない。
そう何度も思った。

山川方夫作『夏の葬列』

仲畑良子
終戦の夏、まだ3才だった母が
機銃掃射から逃げて
あぜ道に飛び込んだ話を
してくれました。
この物語は
まさに母の記憶の光景そのもの、
誰にでも起こりえた
戦争の悲劇です。
戦後70年の節目に
この物語に出会えたことを
感謝します。

山川方夫作『夏の葬列』

朗読：磯野聡、三島光恵、清野千恵子、佐藤智子、仲畑良子

山川方夫作『夏の葬列』

佐藤智子
『夏の葬列』に出会ったのは
中学生の国語の授業でした。
当時は主人公の考えに
違和感がありましたが、
今回何度も
『夏の葬列』を読み、
他の方の意見を
聞いたりしているうちに
主人公の彼の背中を
そっと支えてあげたいと
思うようになりました。
また出会えてよかったと
思います。

朗読わーくしょっぷ〈言の葉を愛でる〉
「山川方夫作 品発表会」

at ナカユクイ（西荻窪）

山川方夫さんのご親族の方がお持ち下さった、貴重な書籍の数々。

朗読わーくしょっぷ〈言の葉を愛でる〉
「山川方夫作 品発表会」

at ナカユクイ（西荻窪）

山川方夫さんのご親族の方がお持ち下さった、貴重な書籍の数々。

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「山川方夫作 品発表会

at ナカユクイ（西荻窪）

終演後は、ナカユクイの
美味しい御馳走とともに、
感想を交わし合い、
山川方夫さんに想いを馳せました。

朗読わーくしょっぷ〈言の葉を愛でる〉
「山川方夫作 品発表会

at ナカユクイ（西荻窪）

終演後は、ナカユクイの
美味しい御馳走とともに、
感想を交わし合い、
山川方夫さんに想いを馳せました。